39, 〜オランダの都市分散計画 Randstadの仕組み〜
Hoi!
今回から少しずつ専門に寄せた話を書いていこうと思います。
初回はオランダの都市多核化政策 Randstadです。
わかりやすくなるようにがんばったつもりですが、どうにもならず長くて難しい内容なのはお許しください🙇♂️
※あくまで自分が調べた範囲であること、英語を無理やり日本語に直したところもあります。よって本当に意図されていることとずれてしまっていることがあるかもしれません。「そういうのもあるんだ、へぇ」くらいに思って見てもらえると助かります。
※参考とした資料を*マークで示しておきますので、調べものをする際にはそちらを参考にしてください。
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・背景
・いつからどこで?
・何を目的としているのか?
・なぜ?
・結果どうなった?現状は?
・将来への道筋
・住んでみて感じたこと
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背景
はじまりは第二次世界大戦後でした。オランダ全体で人口が増加し始めます*。
この流れと同時に、雇用が創出されやすい国の中心に住もう、特にアムステルダムに住もうとする人が増えました。
これ見たオランダ政府はあるレポートを発表します。その中で、当時オランダよりも大都市を抱えていたイギリス・ロンドンやフランス・パリの状況を指摘しながら以下のようなことが書かれていました**。
「(大都市への集中は)経済や文化の原動力となる点からすれば良い影響を及ぼすと考えられる一方、人々が郊外や自然から排除され、都市部で匿名的に生活することになるため(社会及び人々に)悪い影響を及ぼしかねない」
人々が都市部に集中して住み始めると、①住居スペースの不足 ②モラルの低下による治安の問題 ③公私かかわらず投資が都市部へ集中する ことなどが起こり得ます***。
オランダ政府には特に①が問題だと映ったようです。オランダが東インド会社などで歴史上得意とし、一大産業であった貿易・港湾事業の開発可能地を将来に残しておくため、(人々の必要とした住居がその土地を奪う可能性があったため)、アムステルダムへの一極集中はなされるべきではないと判断されました**。
その結果、アムステルダムを中心とする4つの大都市及びその周辺の小都市に人口を分散させようという流れになりました。写真で表すとこんな感じです。左上がロンドン、右上がパリ、左下ルール地方(ドイツ)、右下がRandstadです****。
ややこしいですが、これが大まかな背景です。
・いつからどこで?
先に述べたとおり、Randstadの概念が登場したのは第二次世界大戦後の1950年代後半でした。
Randstadの対象範囲は以下のマップで示したとおりです**。
人口の多いエリアは西(赤)で、中心部はGreen Heartと呼ばれる(緑)地域になっています。ここは草原や牧草地のエリアとなっており、必要以上のスプロールを抑えることや都市と空地のメリハリをつけることに役立っていると考えられます。
・何を目的としているのか?
まずRandstadに関わっている機関を挙げます。5の省庁を含めた国、4つの州、200の地方自治体、12の水道局、そして交通網を管轄する各機関です***。
その各関係機関がRandstadを通じて達成しようとしていることは以下の四つです****。
- 国際的な競争力を高めること
- 経済を活性化すること
- 都市の強みとダイナミクスを強めること
- Grean Heartの価値を高めること
国や地方公共団体のみならず、鉄道網の整備なども含めて人々の生活を豊かに、そして国を強靭にしていこうという強烈な思いがあったのではないでしょうか。
・なぜこんなことをしたのか?
背景のところでも述べましたが、一極集中してもメリットがないという点に尽きるでしょう。オランダという歴史上の役割も関係していることと思われます。
・結果Randstadは何をもたらしたのか?現状は?****
現在、オランダ国土面積でみたときの20%以下の土地に、オランダ国民の40%以上が在住しています。
またRandstadは、オランダで政治、社会、文化、そして経済において最も重要な役割を持つに至りました。国全体の50%以上のGDPを記録しています。
さらに、人々の快適な移動を実現することができたとも考えられます。各地方に分散して住むためには、都市部へのアクセスの良さが必要不可欠です。NS(オランダの鉄道)のIntercityと呼ばれる速達タイプの列車や各方面とのバス輸送が、目的としている4つの達成に寄与していると言えるでしょう。
・将来への道筋****
Randstadエリアは、2040年までに「世帯規模の縮小、高齢化、移民の増加、経済成長、気候変動、個人の福祉の肥大化」に直面するとされています。
そこで、2040年までの長期計画を策定し、これらに対処するための方針が発表されました。
- 気候変動に強い水域と地域ごとの景観: 都市景観の調整と海水面上昇にも耐えうる暮らしを実現
- 都市景観と水域環境、そして都市化の相互作用の質の向上: Green Heartの保護と発展の両立
- 国際的な価値と強みへの注目: ハブ空港であるスキポールとロッテルダムのユーロポートの利活用をさらに促進
- 強靭で持続可能な都市と各地域へのアクセス: 都市機能の更新と再編成
今後どうなっていくかが注目されます。
参考文献
*world meters 世界人口推移 オランダ
https://www.worldometers.info/world-population/netherlands-population/
**Jochen de Vries, The Randstad: in search of a metropolis for the Netherlands, 2012
***Arjen J. van der Brug and Bart L. Vink, Rnadstad Holland 2040, 2008
http://www.isocarp.net/Data/case_studies/1368.pdf
****Henk Ovink, Rnadstad 2040, 3rd conference of IFoU, 2008
http://ifou.org/conferences/2008taipei/pdf/cityandwater_conference_www.ifou.org_04.pdf
・住んでみての実感
さて、ここまでは調べれば全部わかることなので、実際にRnadstadの一部に住んでみてどう思うのかについて少し付け足したいと思います。
住んでみて思うこと、それは隣の都市が近いということです。
先日、ユトレヒトとライデンに電車で行く機会がありました。私の最寄り駅であるStation Zuidからは、双方とも40km弱ほど(路線距離がわからなかったので車での距離換算)離れています。およそ東京駅〜国立駅間、札幌〜長都駅間、新大阪〜神戸駅間の距離があります。
それでも電車に乗っていた時間は、快速列車(Intercity)に乗って25分以下。日本国内で電車に乗って40km弱移動するよりもはるかに早く着きます。
(ex)東京〜国立駅間: 42分、札幌〜長都間: 34分(乗換込み)、新大阪〜神戸駅間: 32分
アクセスを良くすることで人の移動を容易にし、Randstadのような都市分散計画に適した交通体系になっていると言えるでしょう。
こういうわけで隣の都市が近いというように感じるのです。
まとめ
先頭でも言ったとおり、こういうのがあるんだなぁくらいに思ってもらえれば幸いです。
それでは!
Dank u!
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